令和元年度 第1回学校歯科研修会

 9月28日(土)午後3時から札歯会館大講堂にて会員37名、学校関係者8名、会員診療所スタッフ2名の計47名出席で開催されました。講師には一般社団法人日本学校歯科医会副会長柘植紳平先生をお招きして、「令和時代に求められる学校歯科保健関係者の役割~アクティブラーニングと口腔機能発達不全症への対応を含めて~」と題してご講演いただきました。合間にクイズなどを盛り込んだ内容で、大変楽しくわかりやすくお話いただきました。

 

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 はじめに「子どもたちの現状について」です。たしかに12歳における永久歯のむし歯等数は減ってきています。しかし年齢別むし歯の者の割合等を見ると、10歳から12歳において割合が減少するのは乳歯が生え替わることが影響しているもので、他の年齢では決して減っていると言えるものではありません。また疾病・異常の被患率等を見ると、幼稚園・小学校・中学校・高等学校のどの区分でも、むし歯・歯列咬合・歯垢歯肉・顎関節等を含めた歯・口腔の疾病・異常の被患率は40%以上と高いものです。

 つぎに「健康診断の変更点について」です。健診は以前の単なる疾病発見のスクリーニングではなく、生活習慣病の予防、健康相談、保健指導と関連させた健康志向(健康増進)型のスクリーニングに変更しています。疾病(Cなど)に対して削る、詰める、抜くなどの「管理重視型」から、CO,GOなどに対して育てる、守る、維持するなどの「教育重視型」へ変革しています。健康診断をより効果的に行うために、保健調査を全学年で実施し、事後措置の一環として健康診断結果のお知らせを全員に出すようにしています。健診時の器具の滅菌、手指の消毒などが全国的に問題となっており、清潔と不潔をはっきりさせることが重要です。この点でのクレームが多くあり、保護者が目撃していただけでなく、その現場をスマホで撮っており言い逃れができなかったケースもありました。児童虐待の疑いがある場合は、診療室では児童相談所への通報ですが、学校健診時などでは学校長への報告です。

 つづいては「新学習指導要領について」です。平成30年4月から幼稚園で新しい学習指導要領に基づいた教育に移行しております。今回の改訂で特に重視される点としは、アクティブラーニング型授業への変革です。アクティブラーニングとは、一方的に講義を聴くだけではなく自分で考えグループでディスカッションする形式の学習法です。学校歯科保健で行われてきた実践例では、すでにアクティブラーニング型のものが多く行われており、今後より重要視されると思われます。保健の考え方の基本は、自分の健康は自分で守るヘルスプロモーションです。また安全の考え方の基本は、自分の安全を自分で守るセーフティプロモーションです。誤飲・誤嚥による窒息が死因の2位であることから、現在窒息の危険性回避が注目させており、その防止のために危険予測学習が行われております。

 「口腔機能発達不全症」が昨年4月から医療保険に導入されました。その診断基準と学校健診項目が重複しております。今後は、学校においても指導方法などを確立していかないといけません。来年度改訂の歯・口の健康づくりでは、習癖についての対応や指導も含めたものになる予定です。また、医療保険の「エナメル質初期う蝕管理加算」とも関係しており、学校歯科医とかかりつけ歯科医、また教諭や養護教諭などの教職員、家庭、地域などとの連携が重要になります。

 健診時のCO要相談がよくわからないとの質問をいただきます。まずう窩があるかどうかを見ます。う窩が確認できたらCです。う窩が確認できないけど色がおかしかったり、初期う蝕の徴候がでていたりしたらCOとします。そのCOの中でかかりつけ歯科医の相談が必要とするものをCO要相談とします。たとえ1本しかCOがなくてもその子どものリスクが高いと判断すればCO要相談とするし、たくさんCOがあっても管理ができていればCOになります。

 子どもたちへの保健指導を成功させるには、歯が大切だと思う気持ちを持たせることが重要です。甘い物を食べるな!飲むな!歯をみがけ!と指導するのではなく、選んで食べよう!考えて飲もう!工夫して歯みがきしよう!と子どもたち主体の指導でどんどん変わっていきます。

質疑応答にも丁寧に回答していただきました。フッ化物配合歯磨剤の使用法で欧米人はほとんどすすぎを行いません。これは欧米人が食器を洗うときにすすぎが十分でなくても気にかけないという気質からきているとのことです。しかしこれは日本人の気質に合わないので、ほんの少しの水でかるく1回洗口するぐらいを推奨しています。日本人は泡風呂に入ってもシャワーで泡を流してから上がりますが、欧米人は泡だらけのままバスローブを羽織りますので、これも同じような感覚なのでしょう。

 

 

(辻村 祐一 記)