第60回指定都市学校保健協議会

 

前日の歯科保健協議会に続き藤田会長、紅林副会長と供に、平成21年5月10日(日)9時30分 より千葉市幕張メッセにて開催された第60回指定都市学校保健協議会に出席してきました。 開会式、全体会議の後、小谷実可子さんの「私とシンクロ-スポーツを通じての出会い、 そして・・・」と題して記念講演が行われました。

午後からは課題別協議会に移り、「健康教育」「保健管理」「心の健康」「地域保健」の
4分科会に分かれ計28題の口頭提言が行われました。種々の提言を聞くことができたので紹介 します。

 

(1)大平静男大阪市立野田小学校校長の提言は非常に興味深い内容でした。

この学校地域の 福島区学校保健協議会を中心に幼小中学校の縦の連携や、学校医・学校歯科医との連携、 栄養教職員との連携、地域や保護者との連携などにより、こどもの健康つくりを推進していく内容でありました。歯や口の健康について食育を含めた健康教育の立場から地域で協力して 指導する事は、地域全体の子供たちのむし歯や歯周病の予防だけでなく生涯にわたって健康で豊かな生活を送ることにつながると考えるという内容でした。
具体的には、以下に挙げる内容です。

 

1.学校間の連携として、中学生が幼稚園に赴き、幼稚園児の仕上げ歯磨きをしてあげる。 その事により歯磨きの難しさを再確認する事ができる。

2.学校歯科医との連携として、職場体験の授業で実際に印象を取ってみることにより、歯科に 興味を持つ事ができる。

3. 地域との連携として、デイサービスに赴き、老人と交流する。その事により入れ歯のお年寄りに触れ、歯の大切さを学ぶ事ができる。

まだまだ地域で子供たちに指導する手段はいくつもある事に驚かされました。又、学校歯科において校長の影響力が大である事ことも再認識させられました。

 

(2)「デンタル・ネグレクト」という新しい用語です。

広島歯科医師会の小松大造先生の「学校健診でみえてくる児童虐待、学校歯科医の役割」という提言の中で説明がありました。 デンタル・ネグレクトとは「保護者による適切な歯科的健康管理がされておらず、必要な治療をうけさせることなく、多数歯にわたるむし歯(う歯)や歯肉所見の放置などがある状態」 のことを表します。

児童虐待の予防には一次予防(発生予防)、二次予防(進行予防)、三次予防(再発予防) の三段階がありますが、我々歯科医師が関与できるのは二次予防であり、兄弟姉妹の歯科保健における経歴も参考できる歯科医師の役割は大きいとの事でした。実際には学校歯科医と学校 の連携が蜜でなければ予防の効果は薄くなり、我々学校歯科医にとってここまでの学校との蜜 な関係は新たな課題であると感じました。

 

(3)京都市立衣笠小学校養護教諭加藤京子先生の提言です。

この小学校は全校歯みがき、フッ化物洗口、歯磨き指導、歯の染め出し検査等々積極的な取り組みと年2回の歯科健診を実施 するなど、まさに学校歯科が目指している活動と言えるのではと感じました。その背景には京都市内の小学生の歯科治療費は窓口負担ゼロというものがあります。行政のこのような姿勢が処置 率向上等に良い影響を与えている事をあらためて認識しました。

 

(4)食育の提言です。

全体で28ある提言の中で、食育に関係のある提言は一つしかありません でした。「学校給食を活用し、地域に根ざした食育の推進」と題して千葉市登戸小学校の日暮まり子学校栄養職員による提言がありました。学校給食は、日常に食べる食事のモデルとなるべく日々作られているとの事。学校給食を様々角度から工夫を加えており、楽しく感謝の気持ちで食べられるように、食材も自分達で育て、メニューも自分達で学習するなど、栄養学だけにとどまらない素晴らしい学校給食でした。しかし食育のテーマは歯科と非常に密接に接しているテーマにも拘わらず、歯科医師が具体的にどのような係わりを食育のテーマと持つかはまだはっきりとしていないもどかしさを感じるテーマでした。
学校歯科は地域の人々、家庭、行政等のうえに成り立っている事の再確認と、食育という新たなテーマに取り組まなければならない難しさに気づく事ができた学校保健協議会でした。

 

(大橋 聖 記)