第82回全国学校歯科保健研究大会

 「生き抜く力」をはぐくむ歯・口の健康づくりの展開を目指して-学校歯科保健活動のもつ教育力を考える-と題し12月6日・7日沖縄コンベンションセンターにて開催されました。20年ぶりの沖縄開催です。

 

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 1日目は、沖縄県立南風原(はえばる)高等学校郷土芸能部によるオープニングアトラクションからスタートし、表彰式では日本歯科医師会会長賞を学校法人北海道キリスト教学園麻生明星幼稚園と札幌市立定山渓小学校が受賞し、奨励賞を札幌市立新琴似北小学校と登別市立登別小学校が受賞しました。

 基調講演では「児童生徒が身につける長寿の秘訣」と題し、首都大学東京名誉教授 星旦二 先生が講演されました。

 児童生徒の健康長寿のためには、口腔ケアを大切にして、やや小太りでコレステロールをためること。子供たちの望ましい生活習慣の確立や充実した学校生活のための方法としては、子供と親とが会話したりともに遊ぶこと。さらに、沖縄県平均寿命が相対的に低下している背景は、住宅のカビや室内喫煙による閉塞性肺疾患死亡率の高さではないかと推測され、生活習慣や屋内外環境を好ましいものにする公的責任による支援環境の整備、つまりゼロ次予防が必要であること。また、かかりつけ歯科医がいる人ほど、その後の累積生存率が男女ともに維持されるとデータを踏まえ熱弁されていました。最後に教養(今日 用がある)と教育(今日 行く)が大切とのこと。

 シンポジウムは「学校歯科保健活動のもつ教育力を考える」をテーマとして、座長を明海大学学長 安井利一 先生が務め行われました。

 佐世保市立広田小学校教諭 福田泰三 先生が「主体的で対話的な学びを通して、健口食育の学びが深まる指導法-他人事から自分事に変わる自分の健口の健康づくり響育を通して-」と題して、KAZUデンタルクリニック 院長 平良和枝 先生が「学校歯科保健活動、地域連携が及ぼす教育力について-南の島の学校歯科保健活動奮闘記-」と題して、沖縄県教育長保健体育課 健康体育班 班長 上地勇人 氏が「健康・長寿おきなわの復活を目指した学校歯科保健活動からのアプローチ」と題して、それぞれ発表されました。

 学校歯科保健活動は、児童生徒たちが自ら探求していくことが自分の健康を自分で守る「生きる力」につながっていき「教わる学習」から「自分で探求し、伝えていく学びの学習」へとなることが、単に知識を得るだけでなく、知識を実践に生かしていく力になっていく。「わかる」から「できる」になることが「主体的で対話的な深い学びへ」とつながっていくことになる。また、PDCAスパイラルサイクル(Plan計画)(Do実行)(Check評価・見直し)(Action改善)の仕組みを取り入れることが活動の継続、発展に必要なことになる。

 2日目は、幼稚園・認定こども園・保育所部会、小学校部会、中学校部会、高等学校部会、特別支援教育部会の領域別研究協議会が開催されました。

 小学校部会では座長 日本大学歯学部衛生学講座 教授 川戸貴行 先生、アドバイザー 九州大学歯学研究院歯学部門口腔保健推進学講座 教授 山下喜久 先生の下、那覇市立天妃小学校 学校歯科医 仲里正博 先生、那覇市立天妃小学校 養護教諭 内木場香奈子 先生が「心身の発育や健康に関心を持ち、自ら健康の保持増進に努力する児童の育成-学校歯科医と連携した歯・口の健康づくりを通して-」と題し、また天草市立河浦小学校 教諭 坂本 卓眞 先生が「歯・口の健康について自ら気付き、考え、実践する児童の育成」と題し研究発表されました。

 

【要旨】


 天妃小学校では平成27年度よりフッ化物洗口を開始し、う蝕有病率は66.2%から54.7%に、永久歯DMFT指数は1.79から0.56に下がり効果が見られたとのことでした。また、河浦小学校では「気付き・考え・実践する」を流れがわかるように板書に工夫したり、拡大学校保健委員会にて児童が発表する情報発信を行っています。

 「歯・口の健康づくり」への取り組みは、自らの健康課題に気付きやすく、児童に体験を通して解決に向かうプロセスを学習させることができ、さまざまな健康課題を主体的に解決していく力を育成できることになると思われます。

 

 

(平山 泰志 記)