平成30年度全国学校保健・安全研究大会および第68回全国学校歯科医協議会

 10月25日(木)、26日(金)の両日、全国学校保健・安全研究大会が鹿児島市の市民文化ホールにて開催されました。開会式に引き続き平成30年度文部科学大臣賞の表彰式が行われ、北海道より学校歯科医3名が表彰されました。その後第68回全国学校歯科医協議会が城山ホテルにて開催されました。

 

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○講演

「こんなところにも目を向けよう!スクリーニングとして重要な学校歯科健康診断」

鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 小児歯科学分野教授 山﨑要一先生

 

 学校での健康診断は、う蝕や歯周疾患などのスクリーニングのみではなく子供たちの生活背景を推察できる機会でもある。また、「食べる」、「話す」など、人が生活する上で大事な機能を担う口腔器官の健全な育成を通して、心身の健康増進を図るための教育が可能な機会にもなる。

 歯科健康診断では、咬合異常の検出に留まらず歯列咬合の発育期における乳歯外傷や口腔習癖の影響に加え、顎骨内の永久歯の形成と萌出の異常や先天性欠如、さらには口腔からの観察を通した呼吸障害などの検出も可能である。年齢に見合った歯の交換がされているか小学校低学年は特に慎重な診断が必要とのことでした。  発育期に生ずるこのような特徴的な問題について、早期に察知し障害を未然に防止できるような「気づき」の感性を磨かれ、子供たちの歯科的対応に臨んでほしいと結ばれました。

 

 翌日の課題別研究協議会は「学校経営と保健組織活動」「保健管理」「心の健康」「現代的健康課題」「歯・口の健康づくり」「学校環境衛生」「喫煙、飲酒、薬物乱用防止教室」「学校事故防止対策」「教科等における安全教育」「関係機関等との連携による安全の体制整備」の10課題があり、第5課題「歯・口の健康づくり」と第8課題「学校事故防止対策」に出席しました。

 

【第5課題】歯・口の健康づくり

 

 生涯にわたる健康管理の基盤となる歯・口の健康づくりの進め方について発表がありました。

 小学校の養護教諭より、姿勢指導を取り入れて正しい姿勢で良く噛んで食べる習慣を身に付けた報告があり、授業中頬杖をついたり背中が曲がっている子供が多いため鍼灸師を招聘しインナーマッスルトレーニングを取り入れたところ、頭痛・肩こりが少なくなり筋力も向上し学校内でのけがも少なくなった。

 中学校の養護教諭より、歯科衛生士によるブラッシング指導の実施について、歯科健康診断で歯みがきが上手にできていなかった生徒を対象に、昼休みに染め出しと一人ひとりに合わせたブラッシング指導を行った事例の発表がありました。

 総括として「自分の歯の状態」に関心を持ってもらい、どのようにすると問題点が解決できるのか「動機づけ」が大事であると述べられました。

 

【第8課題】学校事故防止対策

 

 学校での事故を未然に防ぐため、危機管理や発生時の適切な対応について発表がありました。

 日本スポーツ振興センターより、災害共済給付データを活用した安全対策について、学校での事故は年間100万件以上発生しており「学校安全Web」の事故事例検索データベースで学校別、傷害部位別、発生場所等、事故の検索が容易にできるようになった。小学校の事故によるけがは休み時間中やお昼休みに多く発生している。高校の野球部のけがは目と歯が7割であるとのことでした。

 長野県教育委員会より、学校体育・スポーツ活動中の事故防止対策として、頭頸部や顔面に強い衝撃を受けた時は安静にしてすぐに専門医を受診し、本人が大丈夫と言っても競技に復帰させないとのことでした。

 

 

(塚本 晃也 記)