平成29年度全国学校保健・安全研究大会及び第67回全国学校歯科医協議会

 11月16日(木)15:30より三重県総合文化センター多目的ホールにて第67回全国学校歯科医協議会が開催されました。

 

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 まず三重県歯科医師会副会長 大杉和司先生の開会の辞に始まり、三重県歯科医師会会長 田所泰先生、日本学校歯科医会会長 川本強先生より挨拶がありました。前回開催県である北海道歯科医師会会長 藤田一雄先生より盛況であった前回大会の報告に続き基調講演Ⅰとして「学校保健から見た児童虐待」―学校歯科医の関わりーと題して子ども虐待防止歯科研究会副会長 森岡俊介先生の講演がありました。

 

 出生数の減少による少子化が進む一方で児童相談所における児童虐待相談対応件数は年々増加している。経済的困窮、ひとり親、育児能力の不足等が大きなリスクとなっている。8020運動を始めとする歯科保健の推進等により、国民の歯科口腔に対する意識が高まり、子どものう蝕罹患者やう歯数は減少傾向にあり、被虐児においても同様の傾向がある。子どもにう蝕が少なくなっている中で、時折う蝕歯数の多い子どもが見受けられる。学校健診では健診後処置完了しない児童・生徒の把握と対応、多数歯う蝕のある場合には地域のかかりつけ歯科医との連携が必要。口腔のセルフケアを指導することによる歯科疾患の予防、重症化予防だけでなく、被虐児にとっては歯科保健を通じ自ら健康管理ができるようになることが重要。現状では児童虐待防止・早期発見に関して歯科診療所の児童虐待への関心度は決して高くはないが、今後の展開次第で広がっていく可能性がある。歯科診療所では児童虐待を疑った場合でも、その根拠あるいは通報方法や通報先について不安が読み取れる。また診療所と親の関係が問題となっている。様々な場面で医療連携が重要視されている現在、歯科医師会は歯科医師の児童虐待への意識の向上とともに、歯科医師会が歯科医師にとって児童虐待の相談や通報先として頼られていることを認識し、病院や児童相談所あるいは子供家庭支援センターとの窓口となる仕組みづくりが必要と考える。最後に医師のHenry Kempeの言葉で「虐待と間違って保護した場合には謝ることができるが、間違って保護せず冷たくなった子供には謝ることすらできない。」

 

 講演Ⅱでは「児童虐待予防 三重県歯科医師会10年の歩み」と題して三重県歯科医師会副会長 羽根司人先生の講演がありました。

 

 三重県歯科医師会では要保護児童はう蝕になっている者の割合が高くう蝕になった歯を処置していない者が多い。数項目の生活習慣とう蝕の処置率から要保護児をスクリーニングできることの可能性が示唆された。50項目の生活習慣アンケートから有意な差があったものを得点化し要保護児をスクリーニングする指数MIES(Maltreatment Index for Elementary Schoolchildren)を使って調査。MIESでは調査対象の10%近くが見守りが必要と検出される。その20%近くが実際の問診でも見守りが必要と判断される。今回の調査で学校が問題ありと認識する児童の半数以上がMIES陽性であった。MIES陽性で学校が意識しない見守り必要児童も発見できた。MIESは早期発見、早期治療、早期介入、行動変容に有意義であり、今後全国レベルで調査できないだろうか?

 

(清水 健司 記)