平成28年度全国学校保健・安全研究大会及び第66回全国学校歯科医協議会

 10月27日(木)13時から札幌コンベンションセンター大ホールにて、平成28年度学校保健及び学校安全表彰式が行われました。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

 開会のことばに始まり、国歌斉唱が行われました。引き続き文部科学大臣、公益財団法人日本学校保健会会長、北海道実行委員会会長より挨拶があり北海道知事より祝辞がありました。続いて表彰式が行われ学校保健の部で学校医58名、学校歯科医48名、学校薬剤師32名、校長等5名、養護教諭12名、学校24校が、学校安全で個人2名、学校26校が、学校安全ボランティア活動で41団体がそれぞれ表彰されました。代表して学校保健の部の学校医宮脇寛海先生(北海道)より謝辞がありました。

 

 続いて14時から全体会講演が「子供たちの学校生活を護るための校内連携と他職種連携」~発達障害、被虐待経験をもつ子供たちを中心に~と題して、こころとそだちのクリニック院長 田中康雄先生より行われました。

 子供たちが生来的に抱えている発達障害と被虐待児症候群があると思われる児童生徒への対応は、校内連携のみならずに、校外の他職種連携が必要不可欠となる。 子供たちが抱えている課題として発達障害として①知的能力障害群、②コミュニケーション症群、③自閉スペクトラム症、④注意欠如・多動症(ADHD)、⑤限局性学習症、⑥運動症群がある。もう一つは被虐待児症候群である。そもそも児童虐待とは、子供の成長と発達を阻むものである。児童虐待とは①外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行:身体虐待、②わいせつな行為:性的虐待、③放置、監護の怠り:ネグレクト、④心理的外傷を与える:心理的虐待、の4つをその代表とする。

 発達障害も被虐待児症候群も、中心にあるのは、その特性が作り出すであろう日々の生活全般に対する、なにかしらの生きづらさであり、つまり「生活障害」である。そしてその対策とは、生活障害の改善を図ることであり、そのためには、個々にあるつまずきだけでなく多くの長所にも目を向け、そのうえでなにかしら阻害的に働いている環境状況を、補償的に変化させることを目標にしている。

 現在の教育現場は多忙を極めていて、教員は日々の生徒との関わりに苦慮するだけでなく、保護者との対応にも心を込め、個々の学力向上のために一生懸命関わり続ける。さらに、個々の生徒の心のケアにも配慮し続ける。対人援助職として対生徒から、同僚、上司、保護者と幅広い。さらにスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった異職種のコーディネートも求められる。

 一方医療の実情では、神経発達症群と被虐待児症候群の鑑別、あるいはその重なりをもって生きている子供たちを診立てることが難しい。医療側が、過剰な判断をしていないかに、医療側が常に自問自答する必要もある。

日々クリニックでの臨床を通して、他職種者と対話をし続け、相互に諦めずに関わり続けることで、折り合いが付けられ、思いやりが生まれる経験を重ねてきた。そこに連携の意義がある。

 

(清水 健司 記)

 

10月28日(金)2日目 課題別研究協議会

第5課題 歯・口の健康づくり

 翌10月28日9時半より札幌コンベンションセンターにて課題別研究協議会の第5課題 (歯・口の健康づくり)が「生涯にわたる健康管理の基盤となる歯・口の健康づくりの進め方」と題して開催されました。初めに、秋田県秋田市立明徳小学校の養護教諭、沖縄県宮古特別支援学校の教諭、北海道羅臼町立春松中学校の養護教諭からそれぞれ研究発表がありました。

 明徳小学校からは「歯科健康診断の効果的な実施と結果等を活用した健康教育の充実について」と題して、主に事後措置について重点を置いた発表がありました。①家庭との連携 ②学校歯科医との連携 ③学級担任との連携 ④児童保健給食委員会の活動 ⑤学校保健委員会での保護者啓発 ⑥よい歯のコンクールへの参加 ⑦通信の発行と校内掲示 ⑧フッ化物洗口に関する説明会の実施 ⑨生活リズム調査の実施 等の実施で児童・保護者・教職員の歯に関する健康意識が高まったとの報告でした。

 宮古特別支援学校からは「本校における歯科保健の取組について」と題して、宮古地区唯一の5障害種に対応の幼稚部から高等部まで69名の在籍する特別支援学校の発表がありました。また、この学校には寄宿舎があり学級担任と寄宿舎指導員とが連携した一貫した指導を行っている特色があります。計画を立てるにあたり特別支援学校ということで、それぞれ障害の程度や発達段階を踏まえて個に応じた目標設定が必要です。また、指導も個別に行う必要があります。卒業後も継続して歯と口の健康管理が行えるように、在学中にかかりつけ歯科医を持てるように働きかけていました。

 春松中学校からは「地域とともに生涯にわたる歯・口の健康づくり」と題して、関係機関との連携がうまく機能して成果を上げている発表がありました。羅臼町は6年前から町全体で幼小中高一貫教育を推進して、学校のみならず、家庭、地域が一体となって、子供が心身ともに健やかに成長するよう、継続的に見守りを行っております。平成24年度から町教育委員会の協力のもと全小・中学の全学年で週1回フッ化物洗口を実施しており、その導入を機会に給食後の歯みがきも開始しています。

 その後、質疑応答を交えながらそれぞれの発表に対する研究協議が行われました。それぞれの学校が置かれている現状はちがいますが、学校歯科保健活動が生涯にわたる健康管理の基盤となるには家庭や地域の支援、連携がなくてはならないことを再度認識させられました。

つづいて、「自分の健康管理の能力を身に付ける歯と口の健康教育の推進」と題して明海大学学長 安井利一先生による講義が行われました。

講義ではまず、歯・口の健康づくりは「健康」という概念を、①見ることができるという学習材としての利便性と、②生活習慣としての歯みがきや間食の摂り方など、行動とのかかわりのなかで考えることができること、③そして見つけ出した課題を解決すると、自分自身の改善のようすもまた見ることができること、④発達段階を踏まえた上で、子供達の自律的・自立的健康管理をはぐくむことができること等、考えるのに非常によい教材であるとの話がありました。また、乳幼児期の他律的健康づくりから自らの意思と努力での自律的健康づくりへの移行期が学齢期であり、自己健康管理能力の育成には極めて重要な時期でありますと話されていました。

 

(辻村 祐一 記)

 

第7課題 喫煙、飲酒、薬物乱用防止教育

 未成年者の煙草、お酒の飲酒はなくならない状況にありさらに薬物乱用へのきっかけとなりやすいため、学校関係者はどのようにすれば効果的に減らすことができるのか、具体的な方法や計画を検討しているのが現状です。

 奈良県立高取国際高等学校 岡本伸正教諭からは煙草の健康被害を繰り返し啓発し、未成年者からの喫煙は依存症をお越しやすいため、煙草ををすう生徒には保護者の同意のもと医療機関を受診させ「医学的なアプローチ」を実施しニコチン依存症を減らしているとの報告がありました。

 北海道上ノ国町立上ノ国小学校 三浦千晶養護教諭からは「町ぐるみ」で小、中、高生の喫煙、飲酒に取り組んだ成果の発表で10年程前では、「お正月」、「お盆」、「お祭り」で家族や親戚の勧めをきっかけに飲酒していた子供が多かったが、保護者も参加する防止教室の実施、町内全戸へ防止教室の内容を伝える広報誌の配布をするようになってからは、大人の意識が改善され子どもの飲酒が減ってきた。又、小学生に防止教室の後、アンケートに今後の自分の行動、目標を記入してもらうことにより意思決定・行動選択能力が高められたとの報告がありました。

 

(塚本 晃也 記)