第67回指定都市学校保健協議会前日歯科保健協議会並びに第67回指定都市学校保健協議会

 平成28年5月28日(土)、29日(日)の両日、静岡市において標記協議会が開催され、高橋担当理事、大川委員長が出向いたしました。今年度は「さっぽろ歯っぴいらんど」と日程が重なってしまったため、山田会長は欠席となりました。

 

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第67回指定都市学校保健協議会前日歯科保健協議会

 

 5月28日(土)午後4時より「ホテルセンチュリー静岡」にて開催され、横浜、相模原、名古屋、堺、神戸、岡山、北九州、福岡、大阪の10都市の歯科医師会または学校歯科医会の参加がありました。なお、今回の開催地、静岡市の歯科医師会は参加していないため、大阪市学校歯科医会による代行開催となりました。

 

1.各都市からの事業報告

 学校歯科保健に関わる事業についての報告が各都市5分ずつの持ち時間で行われました。待機児童対策のための幼保統合が進み、対応に苦慮している都市も多いようです。これまでオブザーバー参加となっていた堺市学校歯科医会と横浜市歯科医師会が正式に加入を表明し、満場一致で承認されました。横浜市は再加入となります。

 

2.協議事項

1)学校歯科検診及び学校歯科検診結果の通知について

〇横浜市からの協議題:ダブルミラー使用の実施状況や感染予防対策について

 ダブルミラー法は、感染防止対策として有効であるが、経費の問題で導入が進まないこともある。検診を2日に分けてミラーを滅菌し直す方法、児童・生徒自身にハブラシを持参させ利用する方法などが紹介された。相模原市、堺市はすでにダブルミラー法で検診できる態勢が整っている。大阪市は「活動報告書」で調査した結果、50%強がダブルミラー法を行っていた。

 関連して、照明を手で持つ必要のないLEDヘッドライトは、誤って児童・生徒の目に当たった場合、保護者からのクレームの恐れがあるのではないかとの意見が出された。

 

〇横浜市からの協議題:学校歯科医間の判断基準の相違を統一する方法について

堺市、大阪市では学校歯科医以外の検診参加を認めていない。

 

〇横浜市からの協議題:健康診断結果の通知における書式並びに確認のサイン記入者について

 横浜市では、定期健康診断結果の通知は保護者が署名して学校に提出することになっている。医療機関で署名する方法では「文書料」を請求される場合がある。参加都市のうち、約半数は保護者署名でOKとなっているようである。

 

〇神戸市、岡山市からの協議題:CO要相談など、改定に伴う「歯・口の健康診断結果のお知らせ」の文面の変更点や工夫について

 名古屋市から独自のお知らせ用紙の紹介があった。COでも受診勧告する形式となっている。

 

2)保健教育のための教材やパワーポイントのスライド共有について

〇札幌市からの協議題:講話用CDなど、教材を独自に制作する場合、掲載する学術的データ、図写真、挿絵などをどのように調達しているのか。また、その費用について

 横浜市では、行政、鶴見大と連携して生活習慣調査を行いデータを得ている。

 

〇名古屋市、大阪市からの協議題:各都市で持っているパワーポイントのスライドなどのデータ共有について

 名古屋市、大阪市からファイル、データの共有にはOneDriveやDropboxの利用が良いのではないかという提案があった。課題としては、ウイルス混入などのセキュリティの問題、誰が管理するのか、有料のシステムを採用した場合の料金負担、著作権の問題、本協議会から脱退都市が出た場合の処理などが挙げられ、次回以降の協議会での継続審議となった。

 

 他にも多くの協議題がありましたが時間の都合で次回協議会に持ち越しとなりました。

 最後に日学歯の藤居 正博 専務理事より「指導・講評」があり、、今回のCO診断基準の改定に関しては日学歯にダイレクトに質問を寄せてかまわないとのことでした。また、教材を製作、共有するに当たっては著作権の問題が障害となるので注意が必要とのことでした。

 

第67回指定都市学校保健協議会

 

 5月29日(日)午前9時30分より午後4時30分まで「静岡県コンベンションアーツセンター」(グランシップ)にて開催されました。主催は静岡市学校保健会と静岡市教育委員会、後援は文部科学省でした。

 「たくましくしなやかな子どもたちの育成を目指した学校保健の推進」というテーマで、教職員、学校医、学校歯科医、学校薬剤師など500名を超える参加者が集まりました。挨拶、祝辞の後、全体協議会では来年は堺市で開催することが確認されました。  続いて記念講演に移りました。

 

【記念講演】

 歴史学者で静岡大学名誉教授、文学博士の小和田哲夫氏による「今川義元のもとでたくましく育った徳川家康」という講演で、戦国時代史研究の第一人者の目からみた、松平竹千代(後の徳川家康)の人物像にせまるお話しでした。それによると、竹千代は、今川義元のもとで、長くみじめな人質生活をおくっていたのではなく、早くから義元にその才を認められ、愛され大切に育てられたのだろうというものです。元服にあたっては義元から一字を与えられたり、義元の姪を娶ったり、まさに一門待遇であったようです。また、今川義元は彼の教育係でもあった高名な軍師雪斎に竹千代の教育を任せるなど、(自分の嫡男氏真にはつけなかった)今川家の優秀な補佐役になってくれることを期待していたことがうかがえると語られました。その後の竹千代の才気あふれる、いくつかのエピソードを紹介し、当時文化的にも秀でていた名門今川家でたくましく、しなやかに成長した徳川家康が後の天下人となり、黄泉の国で今川義元も満足していたのではないかと締めくくられました。ご当地の歴史と文化と教育をからめたご講演で楽しく拝聴できました。

 

【ランチョンセミナー】

 昼食時間を利用して、静岡市立清水病院副院長 上牧 務先生の「成長曲線の活用について」という講演が40分程ありました。学校健康診断で得られた、身長や体重の資料を点でみるだけではなく、小学校の6年間+中学校の3年間の9年間をつないでみて、個々の児童・生徒の成長曲線として、厚労省が定期的に出しているデータと比較してみることによって、慢性甲状腺炎やターナー女子といった成長障害の病気の早期発見につながるというお話でした。

 

【課題別協議会】

 下記の4分科会に分かれて行われ、合計20題の口頭提言がありました。

第1分科会 健康教育「生涯にわたって健康で安全な生活を送るための力を育む健康教育」

第2分科会 保健管理「児童生徒の健康の保持増進と健康で安全な環境の維持を目的とする保健管理」

第3分科会 心の健康「子どもの心の健康づくりを推進する教育活動とケア体制」

第4分科会 地域保健「学校・家庭・地域の連携協働による学校保健活動」

 

〈歯科関連抜粋〉

第1分科会 №1

「自ら進んで歯・ロの健康づくりに取り組む児童生徒を育成し、むし歯及び歯周病のある児童生徒「0(=パーフェクト)」を目指す~平成25年度からの取組を通して~」

広島市立広島特別支援学校 養護教諭 木村 真規子

 

1)児童生徒の実態

 本校は主たる障がいとして知的障がいがあり、肢体不自由などの障がいを併せ有する者も少なくない。吸引・吸入、経管栄養、酸素療法、導尿、気管切開部の管理など、医療的ケアを必要とする児童生徒も在籍している。

○口腔内や口周囲の過敏性から歯磨きの際に、口を開けない、歯ブラシに拒否反応を示すなど、歯磨きに抵抗のある児童生徒がいる。

○歯を磨いていても、適切な磨き方の定着が難しい。

○歯科検診や医療機関(歯科)の受診に対して、恐怖心の強い児童生徒が多い。また、歯科治療を受けることが困難な児童生徒がいる。

○抗てんかん薬の服用による歯周疾患が見られる児童生徒がいる。

 

2)実践内容

(1)学級活動を中心とした保健指導

 個別の目標を設定し、1人ひとりの障害の状態や発達の段階などを踏まえ、指導を行った。

ア 昼食後の歯磨き指導(通年)

イ 歯科検診の事前学習、模擬検診の実施

 学校歯科医の指導のもと、各担任がすべての児童生徒に歯鏡や絵カードを使って、検診目的や受け方について指導した。小学部については、担任が白衣を着用して模擬検診を行った。

 

(2)歯・口の保健指導週間

年2回(6・12月)、保健指導週間を設定し、学校歯科医作成の歯磨きビデオと本校作成の歯磨きソングを放映し、保健指導の際に活用した。

歯磨きビデオ「むし歯をなくそう」は歯磨きの大切さや歯の磨き方などについて分かりやすく解説している。歯磨きソング「歯を磨こう(映像付き)」は、音楽科教諭と保健指導部で作製したオリジナルソングで、映像と歌詞に合わせて歯磨きをしていくと、最後に全ての歯を磨き終えることができるようになっている。

 

(3)健康標語の募集

 歯・口の健康に関する標語を募集し、校内に掲示することで、歯・口の健康づくりに関する意欲向上を目指した。

 

(4)歯磨きカレンダーの配付(年2回)

 家庭と連携した歯磨き習慣の定着を目指して長期休業中に取り組んだ。休み明けには、児童生徒1人ひとりに保健室から表彰状を贈り、児童生徒の取組を評価した。

 

(5)学校歯科医と連携した保健指導

平成20年度から学校歯科医など(研修医や歯科衛生士計12名)と協力して、児童生徒を対象とした指導を実施している。歯垢の染め出し検査を行い、歯科衛生士などが1人ひとりの結果にコメントを記入したプリントを家庭に持ち帰らせるようにした。学校で指導したことが家庭でも継続して実践されるように努めた。

 

(6)個別の歯科保健指導と健康相談

 学校歯科医、広島市歯科医師会及び広島大学病院と連携し、「TEACCHプログラムを応用したオーダーメイドの口腔清掃法」を作成した。また、保護者を交えて健康相談「お口の相談会」を実施した。

 

(7)校内研修会

 広島大学病院障害者歯科の先生に講演をしてもらい、教職員のむし歯予防に関する基礎知識の向上を目指した。

 

(8)保護者対象の講演会

 保護者の歯・口の健康づくりに関する認識や理解が深まるよう、広島大学病院障害者歯科の先生と学校歯科医による講演会を開催した。

 

(9)保健だよりによる啓発

 学校歯科医と養護教諭が共同で保健だよりを発行し、積極的に歯・口の情報を発信すると共に、学校での取組内容についての周知に努めた。

 

3)成果

(1)定期健康診断の結果

 むし歯の罹患者率、未処置者率、歯垢、歯肉の全ての項目において、平成27年度は取組開始前(平成24年度)の値を下回った。

 

(2)児童生徒の変化

○昼食後の歯磨きの際に、歯磨きビデオや歯磨きソングに合わせて楽しく歯磨きができるようになり、実践的な態度の変容が見られた。

○児童生徒が自ら進んで歯ブラシを持ったり、歯ブラシを噛まずに歯面に当てたりする姿が見られるなど、個別の目標を達成することができた児童生徒がいた。

○歯科検診(春・秋)への恐怖心が軽減され、主体的に検診を受ける姿が見られるようになった。

○歯磨きカレンダーの取組を行ったことで、児童生徒から「また磨きたい」という声が聞かれるようになり、歯磨きに対する意欲向上につなげることができた。

 

(3)教職員

○学校歯科医や障がい者歯科専門医による講演会の開催、保健指導や健康相談を実施したことで、児童生徒1人ひとりの障がいの状態や健康状態に応じた歯磨き指導ができるようになった。

○全学部の教職員が歯磨きビデオ、歯磨きソングを活用した歯磨き指導を実施したことで、校内で統一した指導が実施可能となった。進級後の取組の継続も可能となった。

 

(4)保護者

○児童生徒の歯・口の健康づくりについて関心を高めることができた。

○歯磨きの際の環境づくりや効果的な援助方法について理解を深めることができた。

 

第2分科会 No1.

「学校歯科保健の新たなる展望~定期歯科健康診断から見えるもの」

仙台市学校保健会歯科校医部会 飛田 豪先生

 

 学校歯科健康診断は、平成7年(1995年)4月の見直しにより、永久歯の未処置歯をC1~C4の4度分類から「C」のみとし、新たに要観察歯「CO」を導入し、健全歯、要観察歯、未処置歯、処置歯の4度段階で評価することになりました。その時点より、仙台市の学校歯科健康診断ではCO:要観察歯、0:むし歯なし、1:軽度、2:重度の4区分を追加して、現在まで続いているとのこと。(仙台方式)

具体的にはCOがある場合COを○で囲む。

1:軽度(C1・C2)がある場合は1を○で囲む。

2:重度(C3・C4)がある場合は2を○で囲む。

さらに1と2がある場合は2を○で囲むといった方式です。

 従来用いられている方法は、平均値による評価であり、全体像は把握できても、より不明瞭な個々の問題に対処できるスタイルにはなっていないと判断したからとのことでした。

 この「仙台方式」で長年にわたり集計したデータをもとに、提言がなされました。それによると、経年的に児童・生徒のむし歯の数は減少傾向にあるもののその傾向は高止まりの状態にあり、(平成26年の12歳児のDMFT指数は1.0、17歳で3.0)原因としてはハイリスクの児童・生徒が少なからず存在し、その傾向は毎年減少していないことが読み取れるそうです。学校健康診断で疾病をスクリーニングし個々の児童・生徒の健康状態を把握し、健康課題を明らかにしたうえでCOから1:軽度、さらに2:重度へと移行させない健康教育をし(生活習慣の見直し、食行動の見直しなど)、小学校からの重度化を防ぎ、さらに中学校以降のむし歯の増加も防ぐために、個別指導の強化などが必要であることが分かったとの内容でした。

 

 

(高橋 修史・大川 晋一 記)