第64回北海道学校保健研究大会オホーツク(北見)大会

 平成27年11月22日(日)、北見芸術文化ホールにて第64回北海道学校保健研究大会オホーツク(北見)大会が開催されました。今回の大会主題は「北の大地を生涯を通じて、心豊かにたくましく生きるこどもの育成を目指して」でした。

 

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 9時30分より開会式ならびに学校保健功労者表彰が行われました。今年度は学校医29名、学校歯科医50名、学校薬剤師20名、教職員3名が表彰されました。

10時45分より、神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授の川畑徹朗氏を講師に「ライフスキル形成を基礎とする喫煙、飲酒、薬物乱用防止教育」と題して基調講演が行われました。飲酒、喫煙、薬物乱用、暴力などの危険行動は相互に関連があり、ある危険行動を起こした児童・生徒は他の危険行動もとる傾向があること、危険行動を起こすのはメディアや周りの大人や友人の影響があり、防止するためには拒否スキルやメディアリテラシーを高める必要があること、またセルフエスティーム(自尊心)を高めたり、レジリエンシー(精神的回復力)を持つことが大切であることなどが述べられていました。講師からの一方通行ではなく聴衆の発言を積極的に促す大変有意義な講演でした。

 

 13時30分からは部会別研究協議が行われました。第1部会「学校経営と組織活動」、第2部会「保健管理・保健教育」、第3部会「安全管理・安全教育」、第4部会「発達障がいを含む障がいのある子どもの保健教育・安全教育」のそれぞれで2題の提言について協議されました。

 

 

(堀 稔 記)

 

 第2部会1題目の提言では、北見市立大正小学校養護教諭宮田千恵子先生より「自らの命を仲間や家族の命を守り育てる指導を連携して取り組む」と題して、身体測定では「からだ学習」として聴力検査では耳の鼓膜を「サランラップ」、視力検査では眼球を「水風船」と表現し、小学校低学年にも理解しやすい言葉を使いミニ保健指導を実施していること。歯が磨けているかの点検では、歯垢染色液の代わりにお菓子のチョコチップを使うとすすぎを省略できるとの発表がありました。命を守る防災教室では、2011年の東日本大震災を受けて緊急時の避難について、消防署や市の防災担当職員がゲストティーチャーとして話をしていただき、担任の先生も参加し事例を伝えることで子どもたちの記憶に残りやすいと述べられました。

 2題目の提言では、遠軽町立生田原中学校養護教諭上川由紀先生より「心の支えを求める子どもへの関わり」と題し、生徒の4割が児童養護施設から通学し精神的なケアが必要なケースが多く対応が難しい事例についてお話しがありました。心身の発達のバランスが不均衡なこともあり常識的な理解や対応では指導が困難な生徒は保健室利用が多く、そのような生徒に対しては医師による診断や判定を受けていないため安定した支援を受けにくいことから、生徒の様子について担任と養護教諭の双方向で互いに情報を共有することが重要だと述べられました。

 

 

(塚本 晃也 記)

 

第4部会では一つ目の提言として北海道北見支援学校教頭の菅野弘尊先生より「障がいに応じた指導計画の作成と指導内容・方法の改善のために~学校における安全教育から~」と題して、主に障がいのある子どもの避難訓練に対する取り組みについて報告されました。障がいのある子どもの場合、避難訓練の際に非常ベルやサイレンに対してパニックを起こしたり、歩行困難や車いす使用のため迅速な移動が難しいなどの様々な困難が生じるため、障がいの特性とその子どもの実態を把握しそれに合わせた具体的な手立てを明確にする必要があることなどが発表されました。

 

 二つ目は北海道網走養護学校養護教諭の山本知美先生より「本校の健康診断等の指導、支援について―地域の医療機関で安心して受診できることを目指して―」と題して、発達障がいをもつ児童・生徒が学校健康診断を受ける際の問題点や改善への取り組みが発表されました。医療場面で問題となる発達障がい児の特徴のうち、「見通しが持てない」「感覚の問題」「嫌な経験が残る」ことに対して取られた配慮について報告がなされました。二つの提言に対し時間ぎりぎりまで活発な協議がなされました。

 

 

(堀 稔 記)