平成27年度全国学校保健・安全研究大会及び第65回全国学校歯科医協議会

平成27年度 全国学校保健・安全研究大会 課題別研究協議会

 日 時:平成27年12月4日(金)

 会 場:愛媛県松山市 ひめぎんホール

 参加者:高橋担当理事、大川委員長、平山副委員長、堀井委員

 

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第5課題 歯・口の健康づくり

研究協議題:生涯にわたる健康管理の基盤となる歯・口の健康づくりの推進

 

指導助言(コーディネーター):

東京都教育庁地域教育支援部 歯科保健担当課長 三ツ木 浩

 

生涯にわたる健康管理の基盤となる歯・口の健康づくりの進め方についての重要性と、研究協議についての視点について講演された。

・研究協議の視点:

① 歯科健康診断の効果的な実践と結果等を活用した健康教育の充実について

② 各教科、特別活動及び総合的な学習の時間等との関連を図った指導計画の作成、実施、評価及び改善について

③ 学校、家庭及び地域社会が連携した学校歯科保健活動の進め方について

 

研究発表

① 健康診断の効果的な実施と結果等を活用した健康教育の実施について

愛媛県立宇和特別支援学校 養護教諭 片桐 弥生

 

愛媛県立宇和特別支援学校における学校健康診断の効果的な実施と結果等を活用した歯科保健活動の取り組みについて発表された。特別支援学校、特に知的障害部門において、歯科健康診査は苦手な児童・生徒が多く、安全を重視した実施計画が必要である。また、歯科健康診断を効果的な事後指導につなげるためには保護者の理解と協力が必要となる。あわせて、事前準備から事後指導・健康教育の実施に向けて養護教諭を含む教職員、学校歯科医等の連携が大切である。

 

② 歯・口の健康づくりを目指した歯科保健活動の取組

徳島県立徳島科学技術高等学校 養護教諭 近藤 真理

 

教科や課題研究での保健学習、ホームルーム活動や学校行事での保健指導について、また、生徒の実態に即した個別指導、歯科受診の指導、健康相談での学校歯科医や大学・臨床研修医との連携について発表された。学校保健活動の最終段階として生涯にわたる健康の保持増進を課題に歯科保健活動を展開している。歯科保健診断の結果から、歯・口の健康づくりのねらいを意識の醸成、具体的手法の実施、全身の健康づくりへの展開の3点に絞った「学校歯科保健指導計画」を作成し、実施・評価・改善を行っている。

 

③ 学校・家庭及び地域社会が連携した学校保健活動の進め方について

-かんで みがいて 元気に歯ハハ-

高知県いの町立長沢小学校 校長 長瀬 由英

 

山間部の小規模校という特性を活かし、保護者や学校歯科医を巻き込んで学級活動を展開し、児童の保健委員会活動では、校内、保育園で行った劇をDVDにして地域へ提供したり、歯と口の健康づくりキャラクターによる啓発活動を実施するなど、学校、家庭及び地域が連携した学校歯科保健活動の進め方について発表された。

 

講義

学校歯科保健から生まれ出るパラダイムシフト―8020から8028へ―

九州大学大学院 教授 山下 喜久

 

学校歯科保健における保健管理と保健教育についてのこれからの課題について、むし歯への対策、歯周病への対策、8020から8028へのパラダイムシフトの3点を取り上げて講演された。むし歯と歯周病は歯科の2大疾患であるが、それぞれに対する対策は大きく異なり、学校保健においてはむし歯の地域格差対策としての保健管理が重要であり、歯周病については長い人生を見据えた保健教育を通じて豊かで実りある生き方ができる術を伝えることが大切である。

 

 

(堀井 豪 記)

 

第65回全国学校歯科医協議会

 

 愛媛県歯科医師会の主催で、平成27年12月3日17:00より松山全日空ホテルにて開催されました。来年度は北海道歯科医師会主催で開催されるため、札幌歯科医師会としてもお手伝いをする予定であり、視察を兼ねて高橋担当理事、大川委員長、平山副委員長、堀井委員の4名で出向いたしました。

 

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 挨拶、祝辞、文部科学大臣表彰受賞者紹介等の後、講演が行われました。

 

 

「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」及び

「児童生徒の健康診断マニュアル改訂委員会」概要

一般社団法人 日本学校歯科医会常務理事

一般社団法人 埼玉県歯科医師会常務理事

斎藤 秀子

 

 文部科学省は、児童生徒等の健康問題を踏まえて、平成23年度に日本学校保健会に委託し「今後の健康診断の在り方に関する調査」を行った。この調査結果に基づき、平成24年、「今後の健康診断の在り方等に関する検討会」を設置した。2年間ほど検討がなされ、平成25年12月6日「今後の健康診断の在り方等に関する意見」が出された。

 この「意見」に基づき、平成26年4月30日「学校保健安全法施行規則の一部改正等について(通知)」が出された。児童生徒等の健康診断の改正については平成28年4月1日となっている。

 この通知により、平成26年7月30日に(公財)日本学校保健会に「児童生徒の健康診断マニュアル改訂委員会」が設置された。 10回の会議が行われ、平成27年9月に『児童生徒等の健康診断マニュアル 平成27年度改訂』が発刊され、各学校に配布されている。

【記載内容におけるポイント(歯科関連)】

・「検査の準備」の項で、「学校歯科医の指が児童生徒等の口に触れないように、ミラーを両手で持ち、2本のミラー(ダブルミラー)で検査することもあるので、十分な数を用意する。」を盛り込んだ。

・「事後措置」のCOの項で、「臨時の健康診断を行うことが望ましい」とした。

・「留意事項」として、保険調査票以外で確認しておくべきことの中に「指しゃぶりや爪かみ等のくせがある場合」を入れた。また、「検査者のグローブ(ラテックスなど)等にアレルギーのある場合は、事前に確認しておく」を付け加えた。

・各学校に配布されたマニュアル45ページの表8⑤の「歯垢の付着状態」の検査の欄で「歯石の付着状態」との誤植があった。誤解のないように対応していただきたい。尚、現在出版されている物は修正されている。

 

 

「学校歯科医の活動指針」改訂について

-CO・GOの取り扱い及び健康診断結果のお知らせ等を中心にして-

明海大学学長

一般社団法人 日本学校歯科医会学術委員会委員長

安井 利一

 

1.「学校歯科医の活動指針」改訂の経緯

 平成21年に学校保健法が学校保健安全法に改正され、健康相談、保健指導、地域の医療機関等との連携が明示されるとともに、同法施行規則に示されている「学校歯科医の職務執行の準則」においても、歯や歯科疾患に対する局所的対応でなく、学校の関係者とともに子どもの健康そのものを広く支援し、生活環境や家庭環境への対応が求められている。

 平成23年に改訂された「生きる力をはぐくむ学校での歯・口の健康づくり」や平成24年から文部科学省が設置した「今後の健康診断の在り方に関する検討会」の審議内容を踏まえて「学校歯科医の活動指針」の改訂も急務となっていたが、「児童生徒の健康診断マニュアル」の改訂内容の確認も必要となり、この時期の改訂となった。

 また、平成28年度から健康診断を的確かつ円滑に実施するために、健康診断を行うにあたっては、小学校、中学校、高等学校及び高等専門学校においては全学年において、幼稚園及び大学においては必要と認めるときに、あらかじめ児童生徒等の発育、健康状態等に関する調査を行うこととなった。このため、保健調査票についても検討し改訂を行った。

 

2.歯列・咬合および顎関節の診査基準の見直しについて

 歯列・咬合および顎関節については、平成14年に「歯・口腔の健康診断と事後措置の留意点-よりよい顎・口腔機能の育成を目指して-」を提示したが、子どもの発達段階に応じた診査基準、口腔の機能発達およびその重要性、家庭との連携の視点から、個々の子どもの保健調査票の活用方法などについて追加をした。

 さらに、学校保健安全法改正の趣旨から、判定基準2〔専門医(歯科医師)による診断が必要〕については、個別の保健指導や健康相談を重視することとした。

 

3.GOについて

 歯肉の状態の判定基準1〔定期的観察が必要〕」(GO)を「歯垢の付着があるが歯石の沈着はなく、定期的な観察が必要で、生活習慣の改善と注意深いブラッシング等の適切な保健指導を行うことで炎症性症候が消退する程度の歯肉炎を有する児童生徒等」とした。

 

4.COの状態について

 COはあくまでもスクリーニングレベルからみると判定基準1〔定期的観察が必要〕に属するものであるから、「CO要精検」はおかしいのではないかという疑問があった。これを解消するために、ウの表記を「隣接面や修復物下部の着色変化、アやイの状態が多数認められる場合等、地域の歯科医療機関との連携が必要な場合が該当する。学校歯科医の所見欄にCO要相談と記入」とした。

 

質疑・応答

Q.治療を要しないサホライド塗布歯は、大きなう窩があってもCOとして扱うのか。

A.そういうことになります。

 

Q.COの具体例の「ウ」で「隣接面や修復物下部の着色変化、アやイの状態が多数認められる場合等」の表現があるが、「隣接面や修復物下部の着色変化」も多数認められる場合が該当するというようにも受け取れる。

A.確かに誤解を生じやすい表現になっているかもしれません。

 

 

(大川 晋一 記)