平成27年度第1回学校歯科研修会

平成27年度第1回学校歯科研修会が9月5日(土)午後3時から札歯会館大講堂にて開催されました。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERAOLYMPUS DIGITAL CAMERA

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

講師には昨年11月に開催された第63回北海道学校保健研究大会石狩(恵庭)大会でご講演いただき今回聴講対象を広くとの経緯もあり、東京都立小児総合医療センター アレルギー科部長の赤澤 晃先生を招き「食物アレルギーの園・学校での対応」と題して行なわれました。出席は94名(会員38名、会員家族2名、歯科衛生士8名、園・学校関係者39名、教育委員会6名、医師1名)の参加があり、校長先生はじめ教頭、教諭、養護教諭、保育士、栄養士と学校関係者から多数の出席がありました。

 講演では、DVDを含め多くの資料配布と、エピペントレーナーを使った実習もあり、診療中でも気をつけなければならない内容でしたので有意義な研修会でありました。

 

はじめに

 

 食物アレルギーの発症は低年齢の子供に多く、8歳までの子供が全体の80%を占め、家庭だけではなく学校生活においても給食など様々な注意が必要となる。食物アレルギーの発症数は世界的にも増加傾向で、日本ではここ10年間で1.7倍に、アナフィラキシーの既往は3.6倍に増えており学校にエピペンを持ってきている児童、生徒は0.3%とのお話がありました。

 

食物アレルギーへの対応

 

 学校での食物アレルギーへの対応には1.長期(日常)的管理と2.緊急的対応があり、正しい診断のもとに書かれた「学校生活管理指導表」(その児童が何を食べたらどのような症状が出て、どうのような薬を携帯しているのが記載されている)を提出してもらい、学内に食物アレルギー対応委員会を設置して組織的に対応し、それに基づいて給食では除去食を提供する。緊急時の訓練の実施と、エピペン、内服薬が確実に使用できるように管理方法を決めておくことが重要である。

 平成24年に調布市で起きた小学校5年生の学校給食による死亡事故の事例の紹介があり、学校では相談する窓口を作り事故を未然に防ぐこと、アレルギー対応を希望する保護者に「学校生活管理指導表」を必ず提出してもらうことが大事であると話されました。

 

食物アレルギーの症状と診断

 

 症状では蕁麻疹や湿疹の皮膚症状がもっとも多く、続いて呼吸器、粘膜、消化器、で花粉症と同じようなくしゃみ、鼻汁他、口唇の腫れ掻痒など食物アレルギーにより引き起こされる症状は多彩である。

 食べてから症状が出るまでは数分から2時間以内で、30分から1時間が症状のピークで刻々と変化する。2つ以上の臓器に症状が現れる場合をアナフィラキシーといい、血圧低下や意識障害などのショック状態を伴う場合をアナフィラキシーショックと呼び生命を脅かす危険性があるので早期に判断して治療しなければならない。

 食物アレルギーの診断には1.詳しい問診(いつ、どこで、症状は、体調など)、2.食物日誌、3.血液検査(IgE抗体、ヒスタミン遊離試験)、4.皮膚テスト(ブリックテスト、パッチテスト)、5.食物除去試験、負荷試験、などを行い判断する。原因となる食物が分かっていても、卵、牛乳、小麦、大豆などでは、2年以上症状が出ていない場合は見直しが必要とのことでした。

 アレルギー検査で血液中のIgE抗体の値が高ければ、その食物を食べた時に症状を誘発される可能性が高いといえるが、食べた時に何も症状を認めなければ食物アレルギーとは診断されず、除去する必要もない。

 

食物アレルギーの治療

 

 治療には1.食物除去、2.薬物、3.アナフィラキシーへの対応、があり乳幼児期に発症しても年齢が上がれば自然に治ることが多い。食べ物の除去は必要最低限にとどめ定期的に見直す。薬物は抗ヒスタミン薬、ステロイド薬、気管支拡張薬、があり主治医に相談し処方してもらう。アナフィラキシーへの対応で緊急性が高い場合はショック体位で安静を保ち、アドレナリン自己注射製剤(エピペン)を使用し必ず医療機関を受診する。

 家庭や学校では食事療法が大事で、原因食品の除去が基本ですが「必要最低限の除去」がポイントで、成長期の子供に必要な栄養が十分とれるように症状が出る食物だけ除去し、原因食物でも「食べられる範囲までは食べる」ことが最近の傾向となっている。

 

学校生活上の留意点

 

 安全を第一に考えた給食を提供することが大事で、保護者からの通知を基に作成される「学校生活管理指導表」を有効に使う。

 微量の摂取、接触により発症する児童生徒に対する配慮も必要で、食物アレルギーは「食べる」だけでなく「吸い込む」「触れる」ことも発症の原因となるため、牛乳など飲食物の飛沫には十分な注意が求められる。

 

おわりに

 

 講演では、今の30~40歳代の人と20歳代までの若い人では、免疫のバランスに違いがあり、不明ではあるがIgE抗体を作りやすい傾向にあるため、インフルエンザをはじめアレルギーや感染症にかかりやすいとのことでした。最近、花粉症やぜん息を発症する子供が増えてきているのは、衛生環境が良くなってきているのも一つの原因ではないかとお話しされていました。

 独立行政法人環境再生保全機構のホームページでは当日配布がありました関連資料の請求や、eラーニング学習支援ツールを紹介しています。

 

(塚本晃也 記)