第63回北海道学校保健研究大会石狩(恵庭)大会報告

平成26年11月30日(日)、恵庭市の恵庭市民会館において表記大会が開催されました。

 

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午前9時30分より開会式、学校保健功労者の表彰式ならびに表彰盾の授与が行われました。札幌歯科医師会からも15名の先生方が表彰されました。表彰された先生方、たいへんおめでとうございました。 その後、10時45分より基調講演が、東京都立小児総合医療センターからだの専門診療部アレルギー科部長の赤澤 晃先生を講師に招き「学校における食物アレルギー疾患への対応について」と題して行われました。「食物アレルギーはここ10年間で世界的傾向として先進国において患者数の増加と重症化がみられ、近年日本においてもさまざまなアレルギー対応ガイドラインができている。そのような中平成24年12月に調布市で起きた学校給食による死亡事故の事例を紹介し、学校におけるアレルギーに対する長期的管理および緊急時対応が重要であり、そのためには正しい診断のもと書かれた管理指導表(その生徒が何を食べたらどのような症状が出て、どのような薬を携帯しているかが記載されている)を保護者から提出してもらい、それに基づいて給食では除去食を用意し、学内にアレルギー対応委員会を設置して緊急時対応の訓練をしておく必要がある。食物アレルギーの症状で最も多いのは皮膚症状で、続いて呼吸器、粘膜、消化器となり、2か所以上に重い症状が現れた場合をアナフィラキシーといい治療の対象となるが、学校現場ではガイドラインにより緊急性が高い症状が1つでも認められれば治療を開始するように勧められている。症状は食べてから数分から2時間以内に発症し、刻々と変化する。食物アレルギーの診断には1)詳しい問診(いつ、どこで、症状は、体調はなど)、2)食物日誌、3)血液検査(IgE抗体、ヒスタミン遊離試験)、4)皮膚テスト(プリックテスト、パッチテスト)、5)食物除去試験・負荷試験などを行い食物と症状の因果関係を明らかにすることが重要である。治療としては、1)食物除去、2)薬物、3)アナフィラキシーへの対応がある。食物除去は必要最小限にとどめ何年か毎に見直す。薬物は症状が軽い場合は内服薬を使い、アナフィラキシーや緊急性が高い場合はショック体位で安静を保ちアドレナリン自己注射薬(エピペン)を使用し救急車で病院に運ぶ。」また講演では食物アレルギー発症時の誤った対応と正しい対応をそれぞれビデオを使って示していただき、エピペントレーナーを使った実習もありエピペンの使用方法を詳しく教えていただきました。

(高野光彦 記)

【第2部会】報告

午後は1時30分より部会別研究協議が開催されました。私は第2部会の協議題「保健管理・保健教育」に出席しました。今回の視点は、①『適切な健康診断と事後措置、健康相談の進め方、感染症等の予防と対策、学校環境衛生活動の充実など、学校、家庭及び地域の関係機関と連携した保健管理の進め方について』と、②『各教科、道徳、特別活動及び総合的な学習の時間との関連を図った保健教育の実施について』という内容でした。提言は2題で、まず道立大麻高等学校が、「大麻高校の道徳教育を柱にした生徒指導と教育相談」と題し発表をされました。 昨年開校30周年を迎え、地元の進学校としての評価が定着してきたとの説明があり、さらなる教育活動への努力と取り組みについて話されました。同校では「生徒の自己肯定を育成する学校の実現」に向け、倫理観と道徳意識の育成に力を入れており、平成25年度から北海道道徳教育推進校事業の指定を受けているとのことでした。そこで、昨年から全校生徒を対象にして年に一度、道徳教育全体計画の一環として「健康講話」を実施しており、過去2年では北翔大学と道医療大学から臨床心理学の講師を招いて講演を行い、全校生徒へのメンタルヘルスに対する指導や助言をおこなっているという内容でした。講話後は、生徒達からのリターンアンケートや集積された新鮮で多感な感想文等を分析・評価し、その結果報告を今後の課題を含めて発表されていました。次は道立札幌啓成高校で、今年度から始めた新たな取り組みについての提言でした。 生徒との信頼関係をはぐくむために「仕掛ける」健康相談と題し、新入生全員を対象に「かかわりづくり」を重点にした攻めの健康相談を実施して、その分析をもとに今後の可能性について報告していました。そこは全校950名の大規模校で、複数の養護教諭を配置しているにも関わらず、在学中、保健室へ来室する生徒は極めて少なく、その設置意義さえ理解することなく卒業していく生徒が多い状況でした。そこで今年から年度始めに実施する保健調査(独自の問診票使用)や健康診断の結果を基に新入生と一人ずつ面談し、問題点があれば早期に発見しケアできる「攻めの健康相談」を開始しました。担任や学校医との連携も深まり、入学直後から心と体の健康問題の解決と、学校生活への適応に対する生徒への早期支援につながるとの提言でした。今後とも長期的な報告が期待される、興味深い研究課題であると思われました。

(高橋修史 記)

【第4部会】報告

13時30分より部会別研究協議の第4部会、「発達障がいを含む障がいのある子どもの保健教育・安全教育」に出席しました。2名の先生より自校での取り組みについての発表がありました。まず一人目は、千歳市立北進中学校教諭の富樫昌之先生より「障がいのある生徒のための性指導のあり方」という発表がありました。知的に障がいのある方は、性的な感情や衝動を行動に移し社会的な問題に発展してしまうケースが少なくなく、そのような問題行動を繰り返してしまうことが多いと述べられ、社会で良好な人間関係を形成するための支援としての学校での取り組みと実践について話されました。 授業ではスライドを見ながらパブリックな場所でして良いこと、してはダメなこと(例えば人前で服を脱ぐ、異性の体に触るなど)を○か×かで答えさせたり、ロールプレイを見ながら何がいけないのか質問をし、どうすれば良いのか実際に行動させるという実践について話されました。 つぎに北海道千歳高等支援学校教頭の藤本浩先生より「下校時に起きる問題行動への対応と生徒会活動」という発表がありました。この学校には寄宿舎がなく全生徒が通学していることから生徒指導上の問題に至るケースが通学時、特に下校時に発生することが多く、その内容として(1)公共マナーでの問題(駅や店で騒ぐなど)、(2)対人関係での問題(他校の生徒とのあるいは男女間のトラブルなど)、(3)携帯電話に関わるトラブル、(4)家出や行方不明を挙げ、これらの行動は生徒の場面理解の不足、コミュニケーション上の問題、自立活動の問題が原因であると話されました。対応策として、入学後2か月間の継続した登下校指導や問題を起こした生徒に対する特別指導、リサーチ活動(バス会社に直接、生徒の乗車マナーについて確認するなど)、家出対応と危機管理マニュアルの見直し、携帯マナー教室を行っているということや、地域住民との良好な関係を保つために地域の雪かきなども行っていると話されました。その後、質疑応答や意見交換がなされ研究協議は終了しました。

(高野光彦 記)