第78回全国学校歯科保健研究大会

10月23日(木)、24日(金)の両日、第78回全国学校歯科保健研究大会が松江市の島根県民会館にて開催されました。

 

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1日目は、開会式と全日本学校歯科保健優良校表彰式があり表彰状授与と受賞校代表より謝辞がありました。

 

続いて、「学校歯科保健を通して学校、家庭、地域が取り組む健康な心と体の育成」をテーマに、基調講演とシンポジウムが開かれました。

 

基調講演では日本学校歯科医会常務理事、昭和大学名誉教授向井美恵先生が健やかな体の育成のため学校における食育の推進についてお話しがありました。「健康」と「食」に関して、従来は栄養価中心のアプローチが大半であったが、最近では生涯にわたって食の味わいや楽しみからのアプローチもされてきており、子どもの時代から多種類の食品に親しむことや食べる意欲と味覚など、五感を使っておいしさの発見を繰り返す「食べ方」の経験が大切である。食べることは身体の栄養のみならず、味わいや寛ぎなど心の栄養も得られると述べられました。

 

シンポジウムではそれぞれの立場から4名のシンポジストより発表がありました。

 

地方行政の視点から島根県教育庁より、12歳児のう蝕歯数の現状とフッ化物洗口の普及についてのお話しがあり、小、中、高と発達段階別に「食の学習ノート」を配布し学校で学習した内容を家庭へ持ち帰り、家族と共に復習と実践をすることにより食育の効果を家庭へ広げることが出来ると述べられました。

 

学校の視点から「学校経営と歯・口の健康づくり、安全・健康教育の推進並びにISS (インターナショナル セーフ スクール)の戦略的な取り組みと題し、東京都立の学校長より話しがありました。ISSは馴染のない言葉ですが、WHO地域安全推進協働センターが推進している園、学校の安全推進を目的とした国際的認証活動の一つで、けがや事故のリスクがない100%安全な学校として認められるのではなく、安全な学校づくりのための仕組みが確立され機能していることで認められ、世界で110校日本では4校認証されていると述べられました。発表では歯のけがを起こさないように、廊下の歩行、校内遊具の点検、転落防止など、けがを未然に防ぐ取り組みの説明がありました。

 

養護教諭の立場から広島県の小学校より、口腔機能向上の取り組みとして食材を大きめに切り、歯ごたえの残る硬さで調理するカミカミ給食の実施、口唇が閉じず口がぽかんと開かないよう「ポカンX」と呼ばれる装置を挟んで口輪筋を鍛え、鼻呼吸を習慣づけているとの発表がありました。

 

最後に、岡山県の中学校学校歯科医より、歯周病の取り組みについて、学校での健康講話と「歯周病読本」を配布し子どもの知りたい事は何か、知識と実践を伴う学校での歯科健康教育が大切であると述べられました。

 

 

2日目は領域別研究協議会とシンポジウム・領域別研究協議会報告、閉会式がありました。

 

出席しました中学校部会では、島根県の中学校養護教諭が、毎日の生活の中で歯を大切にできる生徒の育成を目指して「CO(要観察歯)」に着目した取り組みが紹介され、健康診断でCOのあった生徒にその部位を通知し、う蝕の進行を促進するような生活習慣を見直す契機となるよう自己管理能力を育てるようにしているとの発表がありました。

 

長野県の中学校教頭と養護助教諭からは、学校歯科医と連携し健康診断の結果や口腔の状況を「歯科健康手帳」に記入し生徒に丁寧に伝え、口腔内写真撮影し生徒自身が口腔内の自己管理意欲を高められるよう工夫しているとの報告がありました。

 

 

両日の講演を通しては、健康な体であることが当たり前の子供たちに歯・口腔の疾患を説明してもピンとこないため、どうのようにしたら自分自身の状況を把握できるのか。健康教育をしていく上で、目で見て効果がわかる歯・口腔は良い題材であること。又、保健教育で大切なことは、学校、地域、家庭の連携も大切であるが、楽しく健康教育をすることが長続きする秘訣であるとのまとめがありました。

 

(塚本晃也 記)