第63回全国学校歯科医協議会

平成25年11月7日(木)午後5時より秋田市の秋田ビューホテルにて第63回全国学校歯科医協議会が開催されました。

 

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来賓挨拶、文部科学大臣表彰受賞者の紹介のあと、「学校での歯科健康診断における歯列咬合・顎関節診査と事後措置を考える」というテーマで、高知県高知市立西部中学校 学校歯科医の野村圭介先生、東京都中央区立泰明小学校 養護教諭の上野弘子先生、日本大学 名誉教授の赤坂守人先生の3名のシンポジストによるシンポジウムが行われました。

 

野村先生は学校歯科医の視点から、学校歯科健診の特徴は「疾病発見型スクリーニング」ではなく「健康志向型スクリーニング」であるとし「歯列・咬合や顎関節は子どもの身体的精神的健康状態や姿勢との関連性において重要なスクリーニングの一つ」であると述べられました。その上で歯列・咬合、顎関節のスクリーニングで重要なことは保健調査票の活用と健康診断後の保健指導であり、西部中学校の具体的な取り組みとして、矯正専門医にも歯科検診に従事してもらっていることや、「あごの健康診断チャート」を活用して生徒自らが自分の生活習慣(頬杖、歯ぎしりなど)に気づき、改善できるようにしたり、また事後措置として保護者や担任、養護教諭と連携した健康相談・保健指導を実施していることなどを話されました。

 

上野先生は、学校でどのようなことを行っているかということで、泰明小学校での実際の取り組みについて話されました。事前の保健調査では歯科に関する5項目のうち、歯列・咬合、顎関節について3項目が入っていることや、歯科健診は3つのコーナーに分けて行い、最初のコーナーでは学校歯科医が健診を行い、次のコーナーでは歯科医が顎関節、かみ合わせ等を重点的に診て、最後のコーナーでは歯ブラシを使い歯科衛生士が個別指導を行っていると話されました。歯科健診の事後措置として歯列・咬合、顎関節に異常のある生徒にはお知らせを出しており、担任と連携して児童や保護者に対する事後措置を行っていることや保健講話を行っていると話されました。

そのためには社会的環境の整備が必要ではあるが、危険行動防止のための教育により育成すべき能力としてレジリエンスが注目されてきている。レジリエンスとは「弾性回復力」と訳されるが「社会の変化や困難を乗り越えて、たくましくしなやかに生き抜く力」と言い換えられるもので、青少年自身が自ら様々な悪影響をはね返し、障害や困難を乗り越えていく能力を身に着けることが重要であると話されました。

 

赤坂先生は学識の視点から、歯列・咬合、顎関節診査の意義としてはQOLの向上と関係が深く、発育期に歯列咬合・顎機能を正しく育成することが重要であると述べ、健診に際しては判定基準に則して行うが、発達段階に対応した診査(舌小帯異常や萌出遅延など)を心がけるべきだと話されました。また事後措置としては、集団保健指導に加え要精検児には健康相談・個別指導が必要であり、従来の保健管理上の健康相談から、今後は保健教育上の健康相談を充実させる必要があるとし、保健調査に関しても健康診断のための保健調査と健康教育・保健指導を目的とした保健調査とを分けて行うべきであると述べられました。

 

その後、質疑応答が行われ閉会となりました。