第62回全国学校保健研究大会

 

平成24年11月8日(木)・9日(金)熊本県熊本市において、文部科学省、熊本県教育委員会、熊本市教育委員会、公益財団法人日本学校保健会、公益財団法人熊本県学校保健会が主催する第62回全国学校保健研究大会が開催されました。

 

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主題は、「生涯を通じて心豊かにたくましく生きる力を育む健康教育の推進―健康的かつ安全な生活を送るため主体的に行動できる子どもの育成―でした。
近年の社会環境の変化は、子どもの心身の健康に大きな影響を与えており、学校生活においても生活習慣の乱れ、いじめ、不登校、虐待などのメンタルヘルスに関する課題、アレルギー疾患、性に関する問題行動、飲酒、喫煙、薬物乱用、感染症など現代的な健康課題が顕在化しています。また、子どもが被害者となる事件、事故や自然災害に対応する学校安全、防災教育などの充実も課題となっています。

 

本研究会は60年以上にわたる研究の成果を踏まえ、これらの課題解決を図り、子どもたちの「生きる力」を育む教育を推進する目的に今年も開催の運びとなりました。
大会初日は、午後1時より開会式、祝辞、来賓紹介などの後、表彰式があり、「学校保健関係」、「学校安全関係、「学校安全ボランティア関係」で多くの学校や関係者、団体が文部科学大臣表彰を受けました。
午後2時からは記念講演がありました。今回は熊本大学発生医学研究所准教授の粂和彦先生をお招きして「睡眠と生活リズム指導の落とし穴」~個人差に基づく教育の重要性について~という演題の講演でした。

粂先生は医学博士で、大学で睡眠の仕組みを研究されている傍ら、週に1回睡眠障害の患者、特に不登校を含む若年者の治療にあたっておられ、インターネットや講演で睡眠衛生の啓発に努めておられる方です。(睡眠障害相談室http://sleepclinic.jp)
ヒトにとって身近な存在である「睡眠ですが、基本的なことを知っている人は医師でさえ少ないとのことで、子ども達の「やりがい・生きがい」という意欲を引き出すために、睡眠は密接に関連があるのだと話されました。

 

特に睡眠時間の問題としては個人差が大きく、その子にとって必要な睡眠時間は、遺伝と環境要因で決まるもので、本人の努力で変えることはほとんどできないとのことでした。大多数の子どもにとって問題がないとはいえ、少数の子どものなかには9時間、10時間の睡眠をとらなくては脳をリセットできない子がいて問題が顕在化しているとのこと。睡眠不足は蓄積するもので、「個人差」についての正しい理解が得られないと、まじめな子程悩み、不登校、うつ病、あるいはもっと深刻な脳の機能不全に陥ってしまう危険もあるそうです。

 

睡眠の科学の話では、レム睡眠、ノンレム睡眠、イルカの半球睡眠などの話を例に、睡眠は大脳皮質を休めるために積極的に脳で作り出されているものだと説明されました。睡眠の質と量は、良質な「眠気」で決まり、日中の光に当たり脳をよく使うことが大切とのことでした。(体を使うことも脳を使うこと。)体内時計のリズムがくるってしまうと、昼夜逆転などが起こり不登校の大きな原因となります。

体内時計が4時間ずれると、立て直すのに1ヵ月はかかるそうです。子どもたちに規則正しい生活リズムを身に着けさせることは、教育の大きな目的の一つである「自立を育む」ことにとって大変重要であると語られました。

 

(高橋修史記)