第59回指定都市学校保健協議会

標記協議会が平成20年5月18日.午前9時30分より、広島市にて開催されました。 午前中は開会式、全体協議会、記念講演が行われ、午後からは4つの分科会に分かれ、課題別協議会が行われました。
それぞれ、歯科に関連する研究発表を抜粋して記載します。

 

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第1分科会健康教育

「子どもたらが自らの健康を保持増進することのできる健康教育の推進」

 

<口頭提言1>

歯科保健事業における新しい試みと、下顎第一大臼歯の重要性について
横浜市立中尾小学校学校歯科医   江口康久万

 

学校歯科医は、日頃から歯科保健事業に積極的に参加し、子どもたちのことを色々な角度から把握していなければならない。その中で歯科健康診断やアンケー ト調査、歯みがき検査の結果はそれらを知るために大変重要な役割を果たす。そして、私たちは調査結果を専門の立場から分析し、問題を読み取り、学校及び保 護者にその結果並びに予防策を提示する義務がある。

歯科保健教育の一環として、子どもたちが口の健康の大切さをわかりやすく理解できる実験や歯科教材は、大変効果があるだけでなく記憶に残るものとなる。 子どもたちの歯科保健に対する理解を深めるための歯科教材として、紙型模型による「いい口模型」を考案した。6年生用に12歳臼歯は萌出途中の状態で描か れており、ブラークのつきやすい所にはばい菌の絵を入れ、歯みがきで注意が必要なところがよくわかるようになっている。また、プラークチャートの代わりと しても使うことができる。

 

<口頭提言2>

心と体の健やかな成長
~基本的生活習慣の確立と積極的な健康つくり~
京都市立納所小学校 教諭 嶋本千人

 

健康管理能力向上のための取組として、学級活動での保健指導や食に関する指導、体育科の保健領域・総合的な学習の時間の健康に関する学習では養護教諭や 栄養職員の専門性を生かした複数指導を実施してきた。また、生活調査による児童の生活実態把握、歯みがきタイムの設定、フッ化物洗口などを行っている。

児童が学習したことの実践や基本的生活習慣の定着は、学校の取組だけでできるものではなく、日々保護者・家庭・地域の方々の協力が大切であると考えている。そこで、学校だより・保健だより・給食だよりの各広報紙を活用して、家庭での協力をお願いしている。

学校と家庭との連携を図るために、フッ化物洗口実施に向けた合同研修会以外にも健康に関わる教職員と保護者の合同研修会を行った。また、学校保健委員会 では定期健康診断の結果やヘルスカードの結果を報告し、学校とPTAをはじめ地域がそれぞれ手を取り合って子どもたちの健康を見守っていこうと協力をお願 いした。
家庭や地域との連携を今まで以上に深め、望ましい基本的生活習慣の確立を目指すとともに、児童自身が健康の大切さに気付き、日々の生活に生かそうとする積極的な健康つくりを目指し、これからも取り組んでいきたい。

 

<紙上提言1>

千葉市における学校歯科保健活動について
千葉市立海浜打瀬小学校 学校歯科医 柴田康司

 

学校歯科保健領域において有効な「保健教育」を実施するためには、学校歯科医と教職員が中心とならなければならない。「保健教育」が中心となった今の時代は、学校歯科医がその学校の職員の1人として「保健教育」のためにも学校に足を向けるべきだと思う。
「歯・口の健康つくり啓発事業」は今年度で全ての行政区を一通り実施し、千葉市歯科医師会の全ての学校歯科医が参加したことになる。参加した学校歯科医の 中には担当する学校において、啓発事業の資料を利用し授業を展開しているところもある。また、「歯医者さんによる喫煙防止教室」は毎年十数校の中から5校 選出しているが、選に漏れた学校では直接学校歯科医に依頼し、実施しているところもある。さらなる内容の拡充を図り、継続していきたいと考えている。

 

第2分科会保健管理

「生涯を通じて健康で安全な生活を送ることのできる子どもたちを育成する保健管理のあり方」

 

<口頭提言1>

むし歯研究所シリーズ&和・歯・8020ワールド
札幌市立定山渓小学校・中学校 学校歯科医 平山泰志
※本会・平山理事の口頭提言の内容は別記で詳しく掲載いたしております。

 

<口頭提言2>

歯や歯肉を大切にする児童を育てる保健指導
名古屋市立八事小学校 教諭 山田浩嗣

 

今日的課題である食育や肥満予防を始め、心身の健康を増進し、生涯にわたる生活の質を向上するためには、咀嚼や発音などに重要な役割を果たす歯や歯肉を 大切にする必要がある。そこで、永久歯の歯列が生えそろう小学生の時期から、自分の健康な生活にかかわり、生涯使い続ける歯や歯肉を大切にする児童を育て る必要があると考える。

児童の「関心・意欲・態度」を高めたり、「思考・判断」を促したりする発問や、教材提示による支援を行い、口腔内に菌が存在することや、菌を歯みがきで 減らせることを実感させたことによって、歯みがきの必要性についての意識が高まり、行動に結び付いてきている。また、基本的なみがき方を基にして、自分の 歯列に合わせたみがき方を考えさせたことで、工夫したみがき方ができるようになってきた。

 

<紙上提言1>

「学校歯科医」と「学校・地域」との連携の重要性
北九州市立赤崎小学校 学校歯科医 田中博

 

「食育」に焦点が当たっている現状から見ると、染め出し液を使ったブラッシング指導や健康診断結果を基にした歯科衛生講話等の指導方法は、色あせて見えるが、子どもにとっての体験としては決して古臭いものではなく、新たな気づきを与えるよい体験のひとつであると考える。

また、地域との連携という観点に立った場合、学校歯科医である我々開業医は、地区の歯科医師会を通じて学校保健会活動の中で教育現場の実情を理解しつつ、より良き助言者であることを望み、協力者であることに誇りを持ちたいと願っている。
学校や地域の教育活動を市民の力で解決するという視点のもと、学校が抱える課題解決には、教職員の意欲、情熱、指導力等の発揮が必要とされているが、そのための突破口はいわゆる「校長力」に尽きるのではないかと考える。

 

第3分科会心の健康

「心の健康課題を克服することのできる支援のあり方や環境づくり」

 

第4分科会地域保健

「学校・家庭・地域社会の連携協力による組織的、総合的な学校保健の取り組みの推進」

 

<口頭提言1>

歯・口の健康つくりをめざした予防歯科の取り組み―堺歯科衛生士専門学校との連携―
堺市立大仙小学校 養護教諭 阿部恵美子

 

実際に取り組んでみて、ゲストティーチャーが学校へ来て保健指導することは大変意味のあることだと感じた。なぜなら子どもたちは、「私たちのために衛生 士さんが学校にきてくれた。」と大喜びで、歯の専門家に勉強を教えてもらうということで、授業を受ける意識が高まった。そして新しい知識を得て、実際に歯 みがき指導を個別に近い形で行ってもらい、歯の健康への意識が格段に高まったからである。

学校保健と地域保健の連携は早くから必要性が求められてきていた。健康は生涯を通して守るもので、一貫した健康づくりを行う必要がある。学校が地域の保 健活動に参加したり、反対に地域や他の健康づくりを行っている機関が学校へきて保健活動をすることは、保健分野全体の活動が活性化され非常に重要なことだ と考える。

歯みがきは毎日の習慣であり、そのため今回のような1回の保健指導だけでなく、機会あるごとに指導を行い、子どもたらが振り返る場面を持てるように支援 することが必要だと感じた。それには学校だけではなく、学校歯科医や歯科衛生士等の専門職や保健センター等の関係機関が関わっていくことで、児童の健康活 動をより活性化できると感じた。

 

<紙上提言1>

学校・家庭・地域が一体となった保健教育を目指して
さいたま市立常盤小学校 教諭 宮出貴正

 

本校では学校保健委員会を「太陽の子フォーラム」と称し、毎学期1回実施している。全家庭に参加を呼びかけるとともに、教職員の研修日に位置付けること により、全職員が参加している。そのため、職員の健康教育に関する意識は高い。この「太陽の子フォーラム」は、教職員の保健教育部が立案、司会、準備等を 担当し、PTA健康委員会が企画、運営に当たっている。内容は、児童の健康をテーマにした話し合い及び、学校医、学校歯科医、学校薬剤師等による講話を 行っている。実施後は、PTA健康委員会が報告として、全家庭に広報誌を発行、配布している。

歯の衛生週間に実施する「よい歯の児童集会」には、学校歯科医、歯科衛生士を迎え、講話とブラッシング指導を行う。TTによる学級活動や、歯科衛生士会の協力を得て「RDテストと歯の指導」も行っている。

これまでの取り組みで児童の健康に対する意識は高まってきている。今後も学校内での児童への保健指導の工夫を重ねていくとともに、家庭とも協力して情報を共有し、学校医等地域の人材を活用しながら、三者が一体となった保健教育を推進していく。