第60回北海道学校保健研究大会宗谷(稚内)大会報告

平成23年11月6日(日)、「第60回北海道学校保健研究大会宗谷(稚内)大会」が、
稚内総合文化センターと稚内市役所を会場に開催されました。

 

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主催は北海道教育委員会、(財)日本学校保健会、(財)北海道学校保健会、稚内市教育委員会で、参加者は学校職員、幼稚園の職員、大学関係者、学校医、 PTA会員、行政機関の職員など、幅広い分野から出席していました。大会スローガンは「北の大地を心豊かにたくましく生きぬく子どもの育成を求めて」で、 宗谷地方の豊かな自然の中でたくましさと優しさを兼ね備えた子どもが育つことを目標に据えた研究大会でした。
9時30分より、開会式・学校保健功労者表彰があり、多数の学校医、学校歯科医、学校薬剤師、教職員が表彰されました。
その後10時30分より12時まで基調講演がありました。今年は京都大学大学院医学研究科社会疫学分野准教授で国連合同エイズ計画共同センター長の医学 博士、木原雅子先生による講演でした。演題は当初、『学校における「性に関する教育」の進め方~「性教育」から「生きる教育」、「予防教育」から「希望教 育」へ~』、ということでしたが、当日変更があり、『コミュニケーションとれない、我慢ができない子どもたち~子どもたちの心身の健康を守るために、大人 ができることは?~WYSH教育の視点から』になりました。木原先生はエイズの研究家ですが、中・高生の性行動に関する豊富なアンケート調査や聞き取り調 査の経験をお持ちのかたで、医師、教育者、保護者としての立場から、このむずかしい年代の子どもたちの保健教育を自ら実践されているかたです。多くの関連 著書を書かれています。まず今時の高校生の性を含めた問題行動を例にとり、色々な興味深いデーターを示していただきました。そこから浮かび上がってくるこ とは、家族や社会との良好なコミュニケーションがとれず、辛抱が苦手でイライラし、自分の心身を大切にせず、携帯電話などに強く依存して生きている、保健 上問題のある子どもが多数いるという現実でした。先生はこのような中・高生の子ども達にWYSH(Well-being of Youth in Social Happiness)教育という手法を実践しており、ビデオも交えて紹介と内容の説明をしてくださいました。これはまず彼らに心穏やかな人間関係を持た せ、次に自分の長所に気付かせ自分に自信を持たせ、さらに現代社会の身近に存在する各種の危険を正しく認識させることにより、自分で考え、自分で気付き、 自分のことを大切にできる子どもに育てるという教育法です。先生の豊富な経験と長期にわたる情熱をかけた活動が生かされているユニークな教育に、会場は熱 心に聞き入っていました。先生は最後に、勿論、簡単にうまくいく教育ではありませんが、我々大人の本気の取り組みは子どもに必ず伝わるものであり、子ども の未来は大人のやる気にかかっているではないでしょうかと結ばれました。大変有意義な90分間の講演でした。

 

部会別研究協議
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午後からは部会別研究協議が行われました。
第1部会「学校経営と組織活動」
第2部会「保健管理・保健教育」
第3部会「安全管理・安全教育」
第4部会「発達障がいを含む障がいのある子どもの保健教育・安全教育」
以上の4つの分科会のうち、第2部会「保健管理・保健教育」に参加してきました。
第2分科会では二つの提言がなされ、一つは 助産師とつくる「いのちの誕生」と題し 稚内市立宗谷中学校 養護教諭 本間知恵子先生の発表がありまし た。ポイントは①受精の映像を通し、自分の存在が奇跡であることを感じる。②胎児の成長を学び、生きる力を感じる。③妊娠した女性の体の変化や大変さを体 験を通して理解し、自分は家族に守られ大事にされていたことを感じる。④赤ちゃんを抱いて、いのちの重さや温かさを感じ、自分の過去と未来をつなげ考える 機会にする。思春期の時期に「いのち」という学習を通し、自分が誕生し育ってきた過去と将来の自分の姿を考える機会を性教育の中に位置づけたいというもの であった。現在多くの学校で行っている性教育は、教諭や養護教諭が中心になって授業を展開しているが、こうした専門職との連携による授業は、より専門的な 知識をもとに視覚や聴覚、体験を通して学ぶ機会になる。
二つ目の提言は 「学力づくり」「心づくり」の基礎となる「体づくり」と題し稚内市立声問小学校 養護教諭 佐野和美先生の発表がありました。児童期の 「体づくり」の取り組みは、「学力づくり」「心づくり」の基礎となり、生涯を見通した時には健康に関する自己管理の力を育成する時期でもある。これらを学 校・家庭・地域とのつながりを大切にした取り組みをしている。①仲間と取り組む:毎朝、朝の会で「おはようしらべ」を行い、「睡眠・朝食・歯磨き・排便・ 体調・感染予防・欠席児童の確認」の7項目を質問形式で実施し、自分の生活を振り返り、次の行動につなげられるようにしている。②家族と取り組む:年に数 回、生活リズムの見直し週間を設け、特に「睡眠・視聴時間<テレビ・ビデオ・ゲーム>」とし、「親子で約束をつくる」「親子で振り返る」ことをお願いして いる。また歯の健康を保つ習慣づくりとして、給食後の歯磨きを日課に位置づけ、年に1時間、稚内市の地域事業である「出前講座」を利用し、保健センターの 歯科衛生士さんによる「歯の健康」を学ぶ機会を設けている。
年に1、2回でも、専門職が行う授業は生徒にはインパクトが大きく、養護教諭と事前の打ち合わせや事後の反省を十分に行うことが、スムーズな授業展開につながっているようです。